日本古来の卵のお話

「半澤鶏卵」のもみじとさくら

 毎日どこかしらで目にする、とっても身近な食材である卵。実は、現在日本で流通してる卵は、産卵率が高い「外国産鶏種」のものが一般的で、そのシェアは九十六%にも上るそうです。一方、日本国内で生まれ、育種改良された「純国産鶏種」のものは非常に少なく、流通している卵のうちわずか四%。そんな希少な純国産鶏種の卵を扱う養鶏場が、河北町にあります。新鮮な卵の販売と卵製品の製造を、養鶏から一貫して手がける「半澤鶏卵」のこだわりについて、石山課長にお話を伺いました。
 「卵のことなら二十時間くらい話せます」という石山さんの口からは、卵愛と共に卵にまつわる知識が溢れます。「卵って、黄身が何重にも守られている、とても不思議な構造の食べ物なんですよ」と石山さん。というのも、卵は殻に入った状態であれば、産み落とされてから、夏場でも二週間、冬場なら一ヶ月は美味しく食べられるというスゴイ食材。殻の下に薄皮、そして水溶性卵白があり、さらにその内側で白身が黄身を包んでいるのです。新鮮な卵ほど卵白に炭酸ガスが多く含まれ、新鮮な卵をゆで卵にすると殻が剥きにくいのもそれが理由。日が経って炭酸ガスが抜けると殻と身の間に空洞ができるため、つるりと殻が剥けるのに対し、ガスが残っていると殻と身がくっつきやすくなってしまうのだとか。

 現在「半澤鶏卵」が扱うのは、日本国内で生まれた純国産鶏種の「もみじ」と「さくら」。河北町内で養鶏されている「もみじ」の卵は、箸でつまめるぷりぷりの赤い黄身に、ふっくらと盛り上がった白身(石山さん曰く、鮮度を見分けるには白身の形も重要!)抗酸化作用や免疫力向上効果のあるさまざまな栄養素がぎゅっと凝縮され、濃厚なコクや甘みが体にスッと溶け込むような美味しさ。「外国産鶏種」の親鳥の方が純国産のものよりも効率良く卵を産みますが、「日本古来のものこそが、日本人の味覚や体質に最も合うはず。日本で卵屋をやるからには、手間がかかっても、日本古来の本当に美味しいものを守りたい」そんな信念から、純国産卵へのこだわりを貫いてきました。
 卵の味は水と餌でほぼ決まります。「半澤鶏卵」は養鶏用の水にきれいな地下水を使用し、飼料はとうもろこしを主食に、地養素、ハーブ、乳酸菌、酵母などをブレンドし、鶏のお腹の中から健康を管理。更に、最近抗酸化作用で話題のカニの甲羅に含まれる「アスタキサンチン」も豊富に含むこだわりの餌で、ストレスのない環境で飼育が行われています。

 卵は何といっても鮮度が命。できる限りうみたての温かい卵をそのまま店頭に届けることで、地元の家庭の食卓を支えてもきました。一般的に、卵が産み落とされてから流通して店頭に並ぶまで三日ほどはかかるのですが、「半澤鶏卵」の取引先には、いつもうみたてが並びます。スーパーやネットでも新鮮な卵が買えるのはとても贅沢なことですね。
 さまざまなこだわりを守るのは容易いことではありません。価格競争が年々厳しくなっていく中で、何とか付加価値のある商品を作れないか。そんな発想で生まれ、全国でヒットしたのが、燻製半熟卵の「スモッち」。秋田や山形で燻製と言えば有名なのはいぶりがっこ。もともとこの地方では、魚など食材を保存するために燻す文化がありました。そんな燻しの文化をおいしい卵で継承しようと、とれたての新鮮な「もみじ」と「さくら」の卵をとろりと柔らかい半熟に茹で、桜チップ燻して三日間熟成させた、黄身の奥まで香る贅沢な逸品。桜チップで「桜咲く」という縁起を担いだ、受験勉強応援のための「合格スモッチ」に始まり、紅白の卵を一つずつ入れた「LOVEッち」など、思いやりと遊び心満載のラインナップも、半澤鶏卵の商品らしく、全国にファンが絶えません。(スモッチの製造工程についてはこちら

 ところで、卵を産み終えた親鳥は、別の河北町名物として生まれ変わります。「冷たい肉そば」の親鳥チャーシューや、町内の居酒屋でよく見かける親鳥の煮込みなどに、余すところなく使われているのです。親鳥は若鶏と違い、やみつきになるコリコリとした食感と、噛めば噛むほど出てくる味わい深さが特徴。ジャーキーやサラミとして加工販売もしています。これらもアミノ酸をはじめ一切の添加物や着色料が入っていないという、全国的にも珍しいこだわりの商品。妥協しないこだわりのものづくりが、地元の暮らしを、そして日本の暮らしを豊かにし、別のこだわりの産業を支えている。そんな河北町ものづくりの精神とその循環が凝縮された、卵のお話でした。
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